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インドに息づく「ごま」

2025-05-14
インドに息づく「ごま」

かつてごまはインドが発祥の地と考えられていました。この説は長く有力視されており、その根拠の一つが、インダス文明(紀元前2600年〜1900年頃)の遺跡から、ごまの種子が小麦や大麦と並んで発見されていることにあります。インダス文明は、現在のパキスタンから北西インドにかけて栄えた古代文明で、高度な農耕技術や交易網を持っていたことが知られています。この時代からすでにごまが栽培・利用されていたことは、インドにおけるごまの深い歴史を物語っています。

また、インドの古典文学や神話にもごまはたびたび登場します。たとえば、古代インドの宗教経典では「ティラ(til)」という名で記されており、霊的・宗教的な価値を持つものとして描かれています。これは、ごまが単なる食料ではなく、神聖な存在として古代から人々の信仰の対象でもあったことを示しています。

実際、インドの宗教の中でも特にヒンドゥー教において、ごまは重要な役割を担っています。ヒンドゥー教の多くの儀式には、ごまが供物や浄化のための素材として用いられてきました。たとえば「シュラッダ」と呼ばれる祖先供養の儀式では、黒ごまが祖先の魂を慰め、悪を祓う力を持つとされ、聖なる水とともに供えられます。また、太陽神スーリヤへの供物としてごまを捧げる風習もあり、宗教行事におけるごまの使用は今も続いています。

さらに、インドにおけるごまの栽培と利用は、宗教的な背景に加えて、菜食主義という食文化とも深く関係しています。ヒンドゥー教や仏教の影響により、インドでは肉食を避ける菜食主義が広く浸透しています。こうした背景から、植物性で高タンパク・高脂質な食品であるごまは、非常に重要な栄養源として重宝されてきました。ごまには、カルシウムや鉄分、ビタミンB群などが豊富に含まれており、肉や魚を口にしない人々にとって、健康を支える欠かせない食材なのです。

現代のインドでも、ごまは主要な油糧作物の一つとして位置づけられています。特にアンドラ・プラデーシュ州、マハーラーシュトラ州、ラジャスタン州などが主な生産地となっており、品種も白ごま・黒ごま・赤ごまなど地域によってさまざまです。食用油(セサミオイル)やスパイスとしての利用はもちろん、アーユルヴェーダの薬用素材、菓子(ラドゥーやチッキなど)の材料、祭事用の供物など、多岐にわたって活用されています。

こうした歴史的、宗教的、栄養的、経済的背景から見ても、インドにおけるごまは単なる農作物の枠を超えた、文化的・精神的な意味を持つ特別な存在であるといえるでしょう。発祥地説が後にアフリカ起源説に取って代わられたとはいえ、インドがごまの歴史と文化において中心的な役割を果たしてきたことは、今も変わりありません。



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